その瞳に写る頃


「そうだ」

アメリカンドッグを食べ終え、炭酸飲料で口内を潤したわたしは、呟くように沈黙を破った。

「高本くんってさ、どこの中学校出身なの?」

「第一中学校」

「ああ、あそこなんだ。わたしは東中学校」

市立第一中学校といえば、わたしが一人でも多くの人と交友関係を築くのに入学から卒業までの三年間を費やした市立東中学校に並び、多くの生徒が現在わたしたちが通っている県立浅葱東高等学校へ進学した中学校だ。

高校入学から間もない頃、一人でも多くの友人を作ろうとしたときに同じクラスの知らない生徒に出身中学校を訊いてまわったので間違いない。

多くのクラスがあるにもかかわらず、第一中学校出身者は記憶にある限り五人いた。


「第一中となると……小学校は? わたしは夏川(なつかわ)小学校」

「河森(かわもり)小」

「へええ。なんか、小学校時代の高本くんと友達になりたい。どんな子だったんだろう」

今となにも変わらないよ、と高本くんは笑った。

「唯一今と少し違うことといえば、もう少し友達がいたことかな」

「へええ、意外」

意外、と繰り返し、複雑な表情を浮かべる高本くんへ、素直にごめんと謝る。

「それはやっぱりあれ? 絵で引き寄せたの?」

「昼休みにはこのキャラクター描いて、図工の時間にはこっそり、下描きの段階でここにこれ描いて、みたいな」

あれ、と高本くんは呟いた。

「これ友達って言わないかな」

困ったような笑みを浮かべる彼へ、「そんなことないよ」と笑い返す。