どうせならば散歩したいと言うと、高本くんは手首の時計を確認した。

それほどではないものをそう見せるのか、はたまた実際にそうなのか、彼の左手首にある腕時計は高価なものに見えた。

このあとに用事でもあるのだろうかと思い言葉を待つと、あまり遅くまで女の子を連れ回すわけにはいかないとのことだった。

攫われるほどの美貌も門限もないので大丈夫だよとわたしは返した。


風葉公園は非常に広かった。

特に目的もなく進んだ先に階段があり、それを下った先には大きな池のようなものがあった。

綺麗なその中では何匹かの鯉が泳いでいた。

高本くんに橋の下で鯉が泳いでいることを伝えようとした直後、後方で四、五歳に見える少女がそれを母親と思しき人物に伝えた。

思わず笑ってしまうと、高本くんは「どうした?」と問うた。

「後ろの女の子と同じこと言おうとした」と答えると、彼は「ああ」と笑った。

十歳以上も年齢の離れた少女と同じことを同等以上の気力で語ろうとしたとは、なんとなく笑いがこみ上げた。