高本くんが縁側にいるわたしを描き終えた翌日からは、二人で多量の宿題と闘うこととなった。

進み具合が同じであったことを喜ぶべきか、答えを見せてもらえないことを悔やむべきか、高本くんの宿題もわたしと同じ程度しか進んでいなかった。


「なんか、高本くんがわたしと同じくらいしか宿題進んでないのすごい意外」

冷房のきいた部屋でも薄っすらと水滴をつけるほどに冷えたスポーツドリンクのペットボトルを指で撫でながら言った。

「そう? 俺、勉強大嫌いだから」

「へええ、それも意外。勉強も完璧なイメージ」

「俺、一つ最高の馬鹿エピソード持ってるんだけど」

「えっ、なになに?」

「小学校三年の頃、担任に『秀は綺麗に馬鹿を証明するな』って笑われたんだ」

「えっ、それどういう意味?」

「その担任曰く、俺、字は綺麗なんだって。だけどその字が書くのはほとんど不正解ってことで、『綺麗に馬鹿を証明する』って」

「ああ、はいはい。君綺麗な字で馬鹿なことを書くねってことね」

「そうそう。字が綺麗だと褒められたことを喜ぶべきか、それとも――って当時複雑だった。まあ喜びはしなかったけどね。かと言って勉強もしなかったけど」

笑いながら語る高本くんのノートへ何気なく目をやると、ページの角にペットボトルと、それにシャーペンを握りながら指先で触れるわたしの手が描かれていた。