縁側にいるわたしを描いてくれと言うと、高本くんは快く引き受けてくれた。

わたしは縁側に座り、彼があった方がいいだろうと持ってきたうちわを持っている。

地紙の部分には小さなスイカの絵がいくつも描かれており、わたしはワンピースのりんごを隠すようにうちわを構えた。


小さな願いが叶った瞬間だった。

実際の縁側にいる自分をなにかに残すというのはある種の夢のようなものだった。

それが今、叶うことが確約された。

高本くんに描かれるとは、写真に残されるよりも嬉しいかもしれない。


「美澄さんには、将来の夢とかあるの?」

ひまわりのそばに置かれた椅子から質問が飛んできた。

決して大きくはない折りたたみ式の椅子で脚を組み、確かに線を描いていく彼は、わたしには非常に素敵に映った。

「将来の夢かあ……」

「ないの?」

「ああ……将来の夢って感じではないかもしれないけど、死ぬまでに一度、有名になってみたいかな。なんかよからぬ事件起こしちゃったって感じじゃなくね」

「へええ。例えばどんな分野で?」

「それはなんでもいいっていうか、想像がつかない。えっ、高本くんにはなにかないの? 将来の夢」

「まるでない」と彼は首を振った。

「だからこそ訊いてみたんだ。なにかヒントが得られるかもしれなかったからね」

高本くんはふふっと笑い、わたしを一瞥して鉛筆を握る手を軽やかに動かした。