その瞳に写る頃


わたしを起こすのは、決まってドアの向こうから聞こえる母の声である。

「さくら、早く。ご飯が冷める」――。

毎晩設定しているはずの携帯のアラームと目覚まし時計の騒音はほとんど意味を成さない。


無理矢理開けた目で時間を確認する。

携帯のロック画面に表示された時間も、目覚まし時計の針が示す時間も、揃って七時十五分だった。

家を出るのは、だいたい七時三十分だ。

十五分なんて着替えで過ぎちまうじゃねえかと思いつつ、布団に別れを告げた。


ワイシャツを着て、下方が緩やかな曲線を描く黒い無地のスカートを履き、緑色の紐リボンを首元に結び、最後に胸元のポケットを校章が飾るだけの黒いブレザーを羽織る。

一つとして難しい動作はないが、寝起きの状態ではワイシャツのボタンを正しく留めることさえ難しい。

首元のリボンなどもってのほかだ。


リボンの色は学年を表す。

現在、三年生が水色、二年生が緑色、一年生が黄色だ。

全体的に黒と白しかないのだからせめて首元にはもっと明るい色を入れてくれと、一年生の頃は思っていた。

入学当時、二年生のリボンが水色であることを知り、あと一年早く生まれたかったと思ったのも覚えている。