どちらからともなく口を閉じた。
一定の時間が経つと聞こえるししおどしの音と、気まぐれに聞こえる風鈴の音に耳を澄ませていると、そのまま眠りに就けてしまいそうな心地よさに包まれた。
「なんかもう、このまま寝ちゃいそうなんだけど」
「ど……。どうぞ、こんなところでいいのなら」
「えっ? ら、ら……。ラッキーだぜ」
「ぜひ素敵な時間をお過ごしくださいませ」
「せ……。蝉の声なんか聞いてたら蝉になった夢でも見そうだな」
「なんだか楽しそうな夢だなあ」
「あーあ。もう終わりにしないか、言葉が浮かばないんだ」
「大丈夫、それは俺も同じだよ」
「よかった、無事に終わりそうだね」
「ね、ね……」
「ねえんだろう? 続けられそうな言葉が。ならばもう終わりにしよう」
少しの沈黙のあとに「うん」と言ったきりなにも発さない高本くんに笑う頃には、眠気もすっかり覚めていた。



