「そうだ」

「どうした?」

わたしは上体を起こし、前方を指で示した。

「あのいっぱいある箱ってなに?」

「ああ、スピーカーだよ。静かに音楽流しながらソファで寝るのが好きなんだ」

「うわあ、確かに幸せなやつだ」

しかしソファが見当たらないなと考えると、それを察したのか「今日掃除してるんだ」と高本くんは笑った。

「いつもはこの部屋を掃除する前に始めるんだけど、今回は先に部屋やっちゃって。だから今、隣の部屋で重曹にまみれてる」

「ああ、それうちでもたまにやってる。ただいつも忘れた頃にやりだすから、毎度『はっ? なにしてんの?』ってなるの」

慣れないんだねと笑う高本くんに、慣れないねと笑い返す。