その瞳に写る頃


紅赤や真紅あたりの色のジャージが、わたしの部屋着兼寝間着だ。

一昨年まで現役だった、中学校指定のジャージである。


着替えを済ませてリビングへ戻ると、母が料理を盛りつけた皿をダイニングテーブルへ並べていた。

「お父さん、帰り遅くなるの?」

「うん」

今朝そう言ってた、と言いながら、母はテーブルへわたしの箸を置いた。

「そういえば、そろそろ新しいの出すんだもんね」

わたしは言った。

「明後日だか明々後日……だったかな?」

母は言うと、料理の前の椅子に座った。

「だから、先に食べちゃおう。帰り、何時になるかわからないし」

わたしはそうだねと頷き、母の向かいの席に座った。

手を合わせ、「いただきます」と声を揃える。


わたしの父は出版社に務めている。

それなりに名の知れている会社だ。

父はそこで、わたしの記憶が正しければ編集長という肩書きを持っていたはずだ。

しかし両親の職業に対し一切の関心を持たないわたしには、どれもこれもどうでもいいことだった。

父も母も、無事に会社に着き、無事に家に帰ってきてくれたら、それでいいのだ。