コの字型の高本家は非常に広い。

敷地内に一人で放られた場合、迷える自信がある。

まず驚かされたのが、門扉から玄関までの距離だ。

あてにならないわたしの感覚だが、十五メートルほどあるように思える。

敷地面積に関してはもはや想像もつかず、仮に尋ねたところで返ってきた数字を理解できないだろうとすら思える。

高本家を初めて訪れたときは、高級旅館にでも迷い込んだのかと本気で思った。

高本くんにはその場でそう伝えたが、大袈裟だよと笑われた。

特に気になっていたわけではないが、彼が他人と関わることを好まない理由がわかった気がした。

恐らく、金銭を中心としたいろいろな感覚が周りの人間と合わないのだろう。


高本家の中庭には、計五種類の植物がある。

外から回り込んだ形で見た場合、すぐ右にひまわり、その奥にあじさい、その向かい側にもみじ、すぐ左につばき、中心に桜の木がある。

中庭の右半分に暖かい季節の植物を、左半分に涼しい季節の植物を集めたらしいと高本くんは言っていた。