二度目の帰り道に絵描き少年はいなかった。

彼はこの景色からなにを感じているのだろうかと思い、いつも絵描き少年が座っている辺りで足を止めてみたが答えは出なかった。


家に帰るとうまそうな匂いが嗅覚を刺激した。

リビングに入り「ただいま」と声を掛けると、台所に立つ母からは「ああ、さくら」と返ってきた。

「おかえりなさい」

「はい、ただいま戻りました」

ふふふと笑う母につられてわたしも笑った。

「ところで今日の夜ご飯はなあに?」

母は再びふふふと笑った。

「なんだと思う?」

「じゃあねえ、唐揚げ」

「おやおや。生姜焼きでした」

残念でした、と母は笑った。

「唐揚げがよかった?」

「まあ……ちょっとね。でもいいよ、わたし生姜焼き好きだし。生姜は多めにお願いね」

ふふふと笑い「しょうがないわね」と言う母に「着替えてくるね」と告げ、わたしはリビングを出た。