放課後、土手に着くより先に会えたらという期待を込め、挨拶のあとショウゾウに声を掛けられる前に教室を出た。

廊下側の一番後ろと真ん中辺りの列の一番前、これだけ席が離れていて、高本くんが先に教室を出たはずがない。

大勢の生徒を率い、階段を駆け下り昇降口を目指す。


一瞬、大勢に追われる二次元のモテるキャラクターの気持ちを味わいながら校門の外まで走った。

その途中、クラスの違う生徒が先を歩いており、それに追いつくことのない己の運動神経を憎んだ。

これではクラスで一番に教室を出なくては高本くんには勝てない。

学校名が刻まれた看板のようなものが貼られた壁に手をつき呼吸を整えていると、「美澄さん」と低い声が聞こえた。

振り向けばショウゾウの嫌な笑みが現れた。

「なんだ、ショウゾウか」

「悪かったわね、ショウゾウ様で。しかしこの我を置き去りにした汝はもっと悪いわ」

どの時代の人だと呟き、ふと目をやった先に高本くんの姿を見つけた。

「ああショウゾウ、ごめん。わたし今日、早く帰らないといけなくて」

ショウゾウの口角が嫌なものを感じさせて上がった気がした。

「許さないわ、そんなこと――」

「本当にごめん、今日遅れたら母上様にどんな罰を与えられるかわからないから」

まだなにか続く予感のしたショウゾウの言葉を遮りわたしは先ほどよりも少し遠くなった高本くんの背へ走った。