その瞳に写る頃


「いやあ、それよりも幻のデザートを一人で二つ買うというこの学校で最も重い罪を正当化するのが難しかったわ」

「ああ」

そういえば、と思った。

「基本一人一個までだもんね。前回は変な理屈を並べたらしいけど、今回はどうしたの?」

「ずっと好きだった、すげえかわいい子に告白するって言った」

顔を向けた先のショウゾウは梅干しのような顔をしていた。わたしも近い顔をしているだろう。

「いやあ、あんなでかい嘘ついたの人生で初かもしんねえわ」

「よかったわよ。本当に告白されたらいかにあんたを傷つけないように断るかと考えちゃったわ」

ショウゾウが言った。

「いやいや、お前らに告白するとか、テストの結果で学年最下位を取ったことのあるこの俺以上の馬鹿がすることだろ」

カッチーン、と呟いた声がショウゾウのものと重なった。

「わたしだってあんたみたいな男嫌だわ。わたくし翔子様には、美貌と優しく大きな心を持った男性がお似合いなのだから」

「ああ、やっぱり寛大な男じゃなきゃ無理だってことは知ってんだな」

「翔子様は意外にも甘えん坊さんだから」

ショウゾウの言葉に、タケモリは「甘えん坊というより人使いが荒いんだろう」と呟いた。

それが聞こえたのか、ショウゾウは「今日の帰り道にでも事故に遭うがいい」と呟いた。