その瞳に写る頃


わたしたちのおばちゃん特製デザートを買いに走ったタケモリが教室へ戻ってきたのは、昼休み開始からほんの数分が経過した頃だろうか。

三階の隅から一階の隅までをほんの数分で走ることのできるような人間でないと入手は不可能なのかと複雑な気持ちになる。


「おつかれ、タケモリくん」

ショウゾウが言うと、タケモリは「俺は何度だって言うぞ」と返した。

「タケノモリだ。松竹梅の竹に森林の森と書いてタケノモリと読む」

「そんなこといいから早くちょうだい、タケヤマくん」

わたしが言いながら手を伸ばすと、彼は「もうなにいじりかもわかんねえし」と言いながらわたしの手首に袋を掛けた。

タケモリの手が戻る前にその平へ百二十円を載せる。

彼は「そこの髪の長い女もだ」と、わたしの百二十円が載った手をショウゾウの方へ向けた。

「百二十円くらいご馳走してくれてもいいのに」というショウゾウの言葉に、タケモリは「昨日そうしてやったろうが」と瞬時に返した。