その瞳に写る頃


中途半端に傘を濡らす霧雨の中、校門が近づいてきた頃から人の気配を感じていた。

わたしは校門を通るとすぐに、学校名が刻まれた看板が付けられた壁に隠れた。

手早く傘を閉じては、柄の部分を握り、先を多くの生徒が歩く方へ向ける。

気分はすっかり狙撃手だ。

辺りを警戒しているようにも見えるショウゾウが校門を通った直後、「パン」と声を上げた。

実際のライフルの発砲音など知らない。

ショウゾウは悲鳴を上げかけたが、こちらを向いてその場へしゃがみ込んだ。

「よくやってくれたわね、サクゾウの分際で……」

「いや、本来なら即死でしょう」

「いやいやならば言うけど、ライフルの発砲音ってパンなの? パンとか、スターターピストルじゃないんだから」

わたしはショウゾウの言葉を聞きながら傘を開いた。

ブレザーの袖と肩の辺りが小さな水滴に飾られていた。


「ライフルなんてそんな物騒なもの、幸せなことに身近にないし」