その瞳に写る頃


布団に入って目を閉じ、それほど経たずに母の声が聞こえた。

朝飯ができた、さっさと起きろとのことだ。

仲のいい上下の瞼を引き離すと、部屋が明るくなっているのがわかった。

母から再度「早く」と声が掛かり、「はい」と叫ぶ。

頭では理解している。

さっさと布団に別れを告げ、着替えを済ませてリビングに顔を出せば母はなにも言わないし、眠気も覚めている。

しかし体がそれを理解していない。

「どうしたものか……」

ぼそりと放った声は、わたし以外の誰に聞かれることもなく姿を消した。


覚めない眠気を覚まそうと、枕に顔をうずめて思い切り叫んだ。

眠気が覚めた気がしている間に立ち上がる。

直後に服を脱げば、長袖を求める体が眠気が覚めたことを事実にする。

「こっつぁみい……」

いつか父が言っていたような言葉を呟き、ワイシャツを羽織る。

こっつぁみい――意味は確か寒いだったか。

手早くワイシャツのボタンを留め、スカートを履いてから寝間着のズボンを脱ぎ、首元にリボンを結んでブレザーを羽織る。

最後に布団にスプレーを吹き掛け、部屋を出た。