その瞳に写る頃


着替えを済ませて戻ったリビングで、ダイニングテーブルに並べられる皿は二人分だった。

「お父さん、今日も遅いんだ?」

わたしは言いながら席に着いた。

「もうそろそろ普通に帰ってこられるみたいだよ」

母はお盆を台所へ戻し、わたしの向かい側の席に着いた。

「さあさ、食べましょうか」

「そうですな。昨日から望み続けた唐揚げですからね」

「だから上げてこ、テンション」

えっ、とわたしは声を出した。

「だから、上げて……だ、から上げて……唐揚げ……」

覚えた違和感を解くと、自然と苦笑がこぼれた。

「お父さんと付き合ってから似ちゃったの、ダジャレ発言」

わたしは「せめて聞いてて気づかない程度の、もうちょっとましなのをちょうだい」と返し、「いただきます」と手を合わせ、箸を持った。

今度は母が苦笑する。

グラスの水を少し飲むと、母も「いただきます」と手を合わせた。