隣の県とはいえ、車で何時間も走れば景色は生まれ育った場所とはまるで違った。

「はりねずみくんのおともだち。」発売の件が落ち着いてから、わたしは就職した会社のある隣の県の栄えた市にてひとり暮らしをすることとなった。

アパートの家賃はわたしの金銭感覚からすればそれなりのものだが、月に一度送られてくる仕送りのおかげでそれなりに余裕のある生活を送っている。


ショウゾウは幼稚園教諭を目指して大学へ進学したと本人から聞いた。

幼稚園教諭を目指しているとは意外だなと思ったが、幼いいとこがたくさんいることを思い出し、向いていなくはなさそうだと思った。

また、高校卒業前に聞いた噂によると、タケモリは体育教師を目指して遠くの体育大学へ、

たてがみのないライオンに間違えられるような犬のストラップを作った女子生徒は美術大学へ進学したらしい。

わたしはあれから、会社のことしか考えていないような男を黙らせたという経験から妙な自信を抱き、それが面接でもうまく働いたか、それなりの企業の営業部に採用された。


わたしは先程受け取ったダンボール箱を開けた。

即席麺やレトルト食品を中心とする多量の食品が入っている。

箱の中の食品のほとんどをテーブルに置いた頃、底に大きな写真のようなものが入っているのに気がついた。

引っ張り出したそれは、日本庭園のカレンダーだった。

カレンダーを包む透明の袋に、「いつか絶対連れて行ってやるからな。休みが取れたら連絡してな」と父の字で並べられていた。

右下に、「体には気をつけてね」と小さく母の字も添えられている。

「こんなものばっかり送ってきてよく言うよ」

母の文字に、わたしは苦笑した。

日本庭園のカレンダーという贈り物に、もう今年も終わりだなと感じるとともに、こちらへくる前のことを思い出した。