絵本「はりねずみくんのおともだち。」が自由帳の中で完成したのは、どこかで永遠のように感じていた高校生活に別れを告げてから三か月後のことだった。
何度もいろいろな場所を変えた。
題名も例外ではなかった。
「はりねずみくんとこあらくん」から、今の形になった。
「絵本の中のわたしたちは動物にしようと思うんだけどさ、高本くんはなにがいい?」
制作を始める前、わたしは言った。
「ええ……美澄さんは?」
「わたしはコアラがいい。なんかわたしっぽくない?」
「ああ、竹森くんといるときは凶暴だもんね」
「えっ、コアラって凶暴なの?」
「意外とそうらしいよ」
「へええ。えっ、高本くんはなににする?」
「どうしようかなあ……」
「ノートに絵を描いててかわいい動物でしょう? ハムスターとか?」
わたしの提案を、高本くんは「いやいや」と拒んだ。
「かわいすぎない? 俺だよ?」
「ええ? じゃあねえ……ハリネズミは? 威嚇するとトゲトゲになるかわいいやつ」
結局かわいいのか、と彼は笑った。
絵本なんだからかわいくしないとだめでしょうとわたしは笑い返した。