「そうか……」

高本くんはふうと息を吐き、中庭へ目をやった。

「いいんじゃない?」と言いながらわたしへ視線を戻す。

「……いいの?」

「俺は全然」

「断られたいわけじゃないけど、高本くんをネタにするんだよ?」

「別にいいよ。その話に、美澄さんも出るんでしょう?」

「まあもちろん」

高本くんはふわりと微笑んだ。

「ならばなおのことさ」

「高本くん……優しいね」

「これは俺からの恩返しだ」

ふと、脳裏にいつかの彼の言葉が蘇った。

高本くんは照れたように笑う。

「美澄さんは、大げさに聞こえるかもしれないけど、恩人だから。美澄さんのためなら、どんなことにだって尽力するよ」

「かっこいいこと言うじゃん」

「今の使ってね、絵本に。美澄さんの想像をゆうに超える恥ずかしさに襲われてるから。世に放って笑い話にしたい」

わたしは「承知しました」と笑いながら頷いた。