わたしは小さく咳払いした。
「お父さんね、なんか知らないけど急に高本くんの絵に惚れちゃったの。どこか悲しくて、それでいて明るくて――みたいな感じでべた褒めてて」
「それはどうも」と高本くんは照れたように苦笑する。
「で、高本くんの絵の魅力が伝わったのは大いに結構なんだけれども、ここで問題が発生した。
あの男からの要求が増えたのだ。
この作画は素晴らしい、だからさくらもそれに敵う話を書け、そして願わくはこの作画の人の魅力をもっと引き出してほしい、くらいのことを言われたわけよ」
「おう……」
相槌から、なんだか複雑だという高本くんの本音が聞こえてくるようだった。
「そこで。わたしが思うに、高本くんの魅力を最大限に引き出せるのは、高本くん自身が主役になった話の絵を描くことなのよ。で――ね?」
「最後、ノンフィクションでお父様を黙らせようと」
そういうことでやんす、とわたしは頷いた。