その瞳に写る頃


「高本くんっ」

翌朝、わたしは教室に入ってすぐに彼の名を呼んだ。

「美澄の声に耳ぶっ壊されたんだけど」と言うタケモリへ、「今日は随分とお早い登校で」と言ったあと、「うるせえ黙れ校則厳守主義者」と返す。

わたしは廊下側の前から二番目である高本くんの隣の席に座った。

席の主は、ライオンのストラップを持っている女子生徒だ。

席替えが行われた日の下校中、わたしはまた隣なんだねと高本くんをからかうように言った。


「その雰囲気は、いよいよ朗報が聞けるのかな?」というタケモリとはまるで違う落ち着いた美声に、「その一歩前に立ったという朗報がね」と笑顔で返す。

「一歩前、というと?」

「次作で絶対に勝てるの。ただ、それは高本くんがオーケーを出してくれた場合で……」

「……俺が?」

「そう」

わたしは一度深呼吸をした。

「わたしたちの話を書こうと思うの」

言った直後、携帯が落とされる音が響いた。

床に手を伸ばすタケモリが目に入る。

「うるせえぞ校則厳守主義者。校則違反繰り返して退学にでもなっちゃえばいいのに」

「この真面目中の真面目であるタケノモリくんが校則違反なんて愚かなことするわけねえだろうが」

わたしは特に返す言葉もなくなり、「うっせばーか」と返した。

隣で高本くんが小さく噴き出す。