その瞳に写る頃


「では、この物語のターゲットとなる年齢層は?」

「小学校低学年……いや、十代全般かな」

「そうか」

わたしは笑いをこぼした。

「なに? 咎める部分がなくて困ってるの?」

いや、と彼は静かに否定した。

「咎めるつもりはないが、この絵を描いている人物は、絵を描いているとき、なにを考えているのだろうと思ってね」

「……はあ? そんなの絵本と関係ないでしょう」

「いや」

そんなことはない、と父は言った。

「機嫌の悪い主婦が作った料理は塩辛い、などと言うだろう」

「初耳だけど」と返せば、「実際にそう言うんだ」と返ってきた。

「お父さんが思いつきで言ったんじゃない」と父は続ける。

お父さんの言葉の虚と実の境界がわからないのだが、とは腹の中で返した。

「そのように、絵にも描いている人物の感情が写る」

「……はあ。それで?」

「この絵からは、なんとも言えないものが感じられる」

「……褒めてるんだよね?」

ああ、と父は真面目な顔で頷いた。

「マイナスなもののようでありながら、惹かれるような感じ」

「べた褒めじゃない。では、本件採用ということでよろしいでしょうか?」

いや、と彼はかぶりを振った。

わたしは腹の中で舌打ちをした。