「いやあ、まさか君が高本くんだとは思わなかったよ」
「ああ……そう?」
「いやあのね、わたし、ずっと高本くんと話がしたいと思ってたの」
高本くんは理由を問うようにわたしを見る。
「わたし、高本くんが学校で誰かと話したりしてるところ一度も見たことがないの。
それに朝は必ずわたしより先に登校してるし、帰りはわたしより先にいなくなってる。
なんかもう、立ってるところも見たことないくらいで、本当に人間なのかなとか思ってたの。とにかく、すごく気になる存在だった」
「ふうん……」
高本くんの反応に、わたしは小さく苦笑した。
「引いたでしょ、今」
「いやいや、そんな。周りをよく見てるなと思って」
「そんなことはないと思うよ。ただ、自分が友達なんて一人でも多い方がいいだろうってタイプだから、一人でいる人がよく見えるだけだよ」
「ふうん……」
「ずっと気になってたんだけど、高本くんはなんでいつも一人なの? 一人なんてつまらなくない?」
「いやあ……そんなこともないよ。一人は気楽。誰にも縛られることはない」
「へええ……。本当にそんな考えの人がいるなんて思わなかった」
「俺も、美澄さんみたいな人が本当にいるとは」
「ええ? じゃあさじゃあさ、おいしいものとか共有したくない?」
「俺……食に興味ないから」
「じゃあ、あとはほら、遊んだりさ。お祭りなんか最高じゃない」
「待ち合わせとか嫌いだし……。人混みも好きじゃないし……」
なにからなにまで違うなと思い笑いをこぼすと、彼も同じ考えに至ったのか控えめに笑った。



