どうよ、とわたしは続けた。
父は静かに自由帳をダイニングテーブルへ戻した。
「さくらはこの物語を通して、読者になにを与えたい?」
父は前回と同じ問いを並べた。
「何事も――やってみなくては、続けてみなくてはわからないということ」
父は下方からわたしの目へ視線を移した。
「本作、『ひかりの矢』の主人公である“ひかり”は、同じ年齢の“アキト”という少年に完敗したことを機に、特技であるダーツから距離を置いた。
自身に、それから興味がなくなったと言い聞かせながら。
その根本には、“アキト”や彼のような人物に再度負けたくないという思いがあった。
つまり、負けることから逃げるために、わざわざ理由を作ってダーツと距離を置いた。
しかし、“ひかり”がまた“アキト”や彼のような人物に負けるかどうかなど、ダーツを続けていなくてはわからないこと。
だから、何事も決めつける前にやってみる、続けてみることが大切なのだと――そういうことを伝えたいなと」
そうか、と父は低い声で呟いた。
母が入れた温かいコーヒーに手を付ける。
わたしは自分の前に置いてある、温かいココアの入ったマグカップを一瞥した。



