その瞳に写る頃


二月中旬、わたしは夕食後、父へ自由帳を差し出した。

その中に生まれ育った「ひかりの矢」を提供するためだ。

ダーツを得意とする主人公の名前は、題名のためにひかりに変えた。

「これならどうよ」

わたしは言った。

父は無言で自由帳を手に取った。

「主人公の“ひかり”は、中学生時代にダーツ始めた高校生。彼女は容姿も美しく、勉強もそれなりにできたために日常生活は非常に充実したものだった。

ダーツの方でも、何度も輝かしい成績を誇るほどの才能を発揮していた。

しかしあるとき、彼女にとっての強敵が現れる。

“アキト”――彼は“ひかり”と同じ年齢だった。

ダーツを始めた年齢も同じくらいだと思われた。

“アキト”はあるときの大会で、“ひかり”と大差をつけて一位を取った。

“ひかり”もかなりの点を得ていたが、それでも彼は二位の彼女と大差をつけた。

以来、“ひかり”はすっかりダーツに対する自信と活力を失った。

ダーツを辞めた彼女は、絶望感を拭おうと勉学に励んだ。

数か月後、“ひかり”は県内でトップクラスの大学へと進学した。

そこで“アキト”と再会する。

“ひかり”は腹の底から彼に嫉妬した。

自分以上のダーツの腕を持つ上、学力までも自身と同等以上だったからだ。

彼女は自身の中から“アキト”を抹殺した。

彼の存在が記憶や胸中にある限り、自身がダーツで完敗したことが脳を占領するからだ。

ダーツ、及びそれに関連する事柄をすべて自身の中から排除した頃、“ひかり”は“アキト”に声を掛けられる。

なぜダーツを辞めたのか、なぜダーツをやらないのか――。執拗な問い掛けに、彼女は興味がなくなったからだとだけ返し続ける。

しかし“アキト”は彼女の胸中を見抜いていた。

自分は同じ年齢の人間に負けた。

その一度の敗北で、ダーツに対するすべてのものを失った。

しかしそれは単なる負けからの逃げであった。

“ひかり”はただ、負けることを恐れていただけなのだ。

負けを恐れるあまり、勉学に走りダーツに興味がなくなったと思い込んだ。いや、思い込もうとした。

彼にそんな己の胸中を突きつけられたとき、“ひかり”は大学で“アキト”の姿を見つけた瞬間を思い出す。

腹の底から湧き上がる嫉妬心を、彼女は最後の戦いだとし、ダーツへぶつけた。

結果は“ひかり”の圧勝。“アキト”の『それでこそ本当の君だ』という言葉を機に、彼女は再度ダーツの道を走る――」