その瞳に写る頃


いつもの和室に入ると、一年中ぶら下げられているという風鈴が寒々しい音を響かせた。

楽譜、という高本くんの返しに困っていたわたしは、「風鈴」と返した。

「終わっちゃった」と残念そうに言う彼へ、「終わらせたんだし」と返す。


「えっと……なんだったっけ?」

高本くんはテーブルの前に座りながら言った。

「ある特技を持った主人公がそれを巡って自らの負けを認めざるを得ない状況に陥り、以来その特技から逃げるが、ある人物の言葉をきっかけに再度その特技を極めていくっていう話」

わたしは彼の左隣に座りながら言った。

「で、あれか。その特技の候補として上がったのが、囲碁とダーツ」

「そうそう」

忘れないでよとわたしは苦笑した。

「どうしようかな。わたしは、高本くんのお母様が経験者ということでダーツでもいいかなとか思ってるんだけど……」

「そう。ならそれでいいんじゃない? 俺、今日にでも情報集めておくから」

「ありがとう」

本当に助かる、と続けると、彼は「言ったでしょう、美澄さんのためならなんでもすると」と笑みを浮かべた。