「イゴ……とか?」
しばらくの静寂のあと、高本くんが静かに言った。
「イゴ……? 以後気をつけます、みたいな?」
いや、と彼は苦笑した。
「イゴってボードゲーム知らない? 二色のゴイシっていう石を、二人のプレイヤーが交互に置いていくっていう」
「ふうん……。知らないなあ」
言いながら、わたしはブレザーのポケットから携帯を取り出した。
検索アプリを起動し、“いご”と入力した。
その真下に“囲碁”という文字が表示された。
「そのイゴってボードゲームさ、囲むって漢字入ってる?」
「うん」
わたしは“囲碁”で検索をかけた。
表示された画像を見て、わたしは和風なオセロといった印象を抱いた。
「でも別に、無理に囲碁にする必要はないよ」
「まあね。ただ、ちょっと気になっちゃって」
囲碁について解説している記事があり、わたしはざっとそれに目を通した。
「意外とシンプルなルールなんだね」
「そうっぽいね。やったことはないけど」
「そういえばわたし、やったことのあるボードゲームってオセロくらいだ」
「ああ、そういえば俺も」
「高本くん、オセロで勝ったことある?」
「うん。俺、オセロはだいぶ強いんだ」
「へええ、羨ましい限りだ。わたし、記憶にある限り一度も勝ったことないんだよね。家族にも友達にも。小学生の頃に年下ともやったけど、その子にも負けた」
あのゲームに勝ち方ってあるのかなとこぼすと、高本くんは「そんなに弱いの?」と楽しそうに笑った。



