リビングでは、母がトースターから食パンを取り出していた。
わたしと目が合うと、彼女は苦笑した。
「おはよう、さくら。ちょっと今日事故が起こってね。炊飯器のタイマー、セットするの午前と午後間違えちゃってご飯ないから、パン食べて行って」
「ああ、うん。了解です」
母の隣の席に着くと、トイレに行っていたらしい父が戻ってきた。
「おはよう」という彼の声に同じように返したが、自分の声や放つ雰囲気はどれほどのものかわからない。
「お父さんバターでいいよね」
「ああ。ありがとう」
両親の会話を聞きながら、わたしは袋から食パンを一枚取り出し、そのままかじった。
「もうちょっと待てば焼いてあげたのに」
母の声へ、「お腹空いてて」と笑い返す。



