目を開けると、鼓動がいつもより強く感じた。
まるで高熱が出ているかのような感覚に、わたしは掛け布団をはいだ。
夢での父の言動が嫌というほど染み付いている。
この絵からはなにも感じられない――。
そのうち言い出しそうな言葉だ。
「必ずやあの男を……」
布団の上で右手を強く握り、黙らせるとわたしは腹の中で続けた。
携帯のロック画面は起きるべき時間の三十分前を表した。
学校ではそろそろ生徒用の昇降口が解錠される頃だ。
わたしは布団に消臭スプレーを吹き掛け、着替えを始めた。
気がつけば十二月も中旬に入っていた。
大切な友人と大きな夢を得た高校生活も、間もなく終わってしまう。
冷えたワイシャツに袖を通すことも、それに冷えたブレザーを羽織ることも、ふんわりとした形のらしくないスカートを履くことも、あと数か月で終わるのだ。
わたしは首元に黄色のリボンを結びながら、それまでにあの男を黙らせると己の感情に誓った。