「この絵からは感じられるものがない」
父は言った。
「なに、内容や生まれ方の次は作画にいちゃもんをつけるわけ?」
「そういうことではない。素直な感想を述べたまでだ」
「なんでこの絵でなにも感じられないの? 今まで父親だと信じ慕ってきた物体がそもそも人間ではなかったくらいの衝撃なんだけど」
わたしは吐き捨てるように言葉を並べながら一度ダイニングテーブルを叩き、言い終えるとそこへ突っ伏した。
「この絵を描く人物に、さくらが言うほどの才能はない。絵の世界へ向かっても、恐らく失敗するだけだろう」
わたしは拳で思い切りテーブルを叩いた。
預けていた上体を起こすと同時に立ち上がる。
「あんたに彼のなにがわかるっていうの? 彼がどんな気持ちで今まで生きてきたか、どんな気持ちで絵を描いてるか――。
わたしにだって到底知り得ないのに、顔を合わせたことどころか名前さえ知らないようなあんたに、彼の批判をする資格はない」
わたしは泣きながら叫んだ。
父は未だ余裕を感じさせる笑みを浮かべる。
わたしは再度テーブルを叩いた。