「あの話を考えたのは誰だい? 物語の内容を考えたのは」
「主にわたしだけど。それが?」
「では、さくらはあの物語を通して、読者にどういった刺激を与えたい?」
「刺激……」
わたしはダイニングテーブルへ視線を落とし、思考を巡らせた。
「ただ絵を世に広めたかった、それだけだろう?」
「じゃあ、あの絵で人がなにかを感じるとは思わないわけ?」
「絵本に求められるのは絵だけではない」
「じゃあ――」
あの話になにが足りないのだ、と言いかけてやめた。
答えは先程聞かされていた。
「わかった」
呟くように放った声はあまりに小さかった。
「『ジェムのあしあと』――あれよりもいい話を書けばいいわけね?」
わたしの問いに、父は呆れたようにふうと息を吐いた。
わたしはそれを肯定と見做した。