その日の夜、わたしは夕食が済んだ直後、父に絵本の話を持ち出した。
「お父さん、制作者の希望が込められていれば、その物語は人になにかを与えられると言ったね」
父はまだ諦めていなかったのかとでも言いたげにため息をつき、「ああ、言ったよ」と答えた。
「わたしは昨日、絵本を出したいと考えた理由を勝手に作画の人の絵を世に広めたいと考えているかのように話した。
だけど実際は、あの絵を描いた人も自身の絵を世に広めたいと、絵で仕事がしたいと考えてた。
これは、わたしの単なる自己満足のようなものではなく、もう一人の、作画の人の願いが叶うことになる」
父は呆れた様子で視線に宙を走らせた。
「お父さんは、作画の人が自身の絵を世に広めたいと考えているのであれば、あえてわたしと絵本を作るなんてことはせずに絵の世界へ向かうと言った。
もしもその“絵の世界への向かい方”というのが絵本画家だった場合、絵本の文章を書く人が必要になる。
今回『ジェムのあしあと』の絵を描いてくれた人にとってその文章を書く人というのがわたしであった、というのが今回の形であるとは取れない?」
父は深く息を吐いた。
彼の低い声がわたしの名を呼ぶ。



