その瞳に写る頃


「高本くん」

翌日、わたしは登校すると高本くんの隣の席に着いた。

真ん中の列の一番前で、席の主はだいぶ仲のいい男子生徒だ。

彼は「どうしたの」と驚いたような声を上げる。

「恥じらいとかなんとか全部取っぱらって、正直に答えてほしい」

はい、と高本くんは微かな声で頷いた。

「高本くんはさ、自分の絵、世に広めたい?」

「えっ……どうして?」

不安げな声が返ってきた。

「それがわからないと、あの男は黙らせられない」

「えっ。まさか美澄さん、お父様と喧嘩なんかしたんじゃないよね?」

「喧嘩はしてない。ただ、理解されなかった。わたしが絵本を出したいと考えた動機を。

高本くんの――いや、名前は出してないけどね。絵を世に広めたいからだと言ったら、そのような理由から生まれた物語は人になにも与えられないと言われた」

「ああ……随分と深い会話が行われたんだね……」

「で、高本くんは自分の絵をどうしたい? 素直に言ってほしい。別になんて答えようと、嘲笑したり咎めたりしない」

わたしはふっと息を吐き、改めて問うた。

「高本くんは、自分の絵をどうしたい?」

願わくは、と微かに聞こえた。

「できることなら、絵を仕事にしたいとは思ってる」

わたしは自分の表情がやわらぐのを感じた。

「そうか。じゃあ、どんな手段を使ってでもこれをその一歩にしないとね」

笑顔で言うと、高本くんは微かに頬を赤らめ、目を逸らした。