その瞳に写る頃


ダイニングチェアに腰掛けて向き合うわたしと父の間に流れる いささか緊張感の目立つ空気をやわらげるように、母が「難しいことを考えるなら糖分が必要でしょう」と温かいココアを持ってきた。

わたしは無言で笑顔を返し、感謝の意を表した。

父の方へ向き直り、表情を戻す。

「絵本を出したいのはわかった。しかし、その理由がさっぱりわからん。小遣い稼ぎか? 小遣いならばこんなことをせずともお父さんがやる」

「お父さん、さっきざっとその自由帳に目を通して、なにに注目した?」

「……内容、作画、またそのバランスだ」

なにが言いたいのだとでも言いたげに父は答えた。

「わたしがその話を絵本として世に発信したい理由は、その絵を世に知らせたいから」

彼はますます意味がわからないといった様子で眉をひそめた。

「その絵、まるで写真のようでしょう? わたしはその絵を世間に知らせたいの」

「誰がこの絵を描いたのかは知らないが、その人物はそれを望んでいるのか?」

わたしは返す言葉を失った。

高本くんが自身の絵を世に広めたいかどうかは確かではなかった。