その瞳に写る頃


高本くんは小さく笑ったあと、すぐに作業に取り掛かった。

「あのさ」

わたしは言った。

「……都会って、どんな場所だと思う?」

高本くんは鉛筆を握った状態で動きを止めた。

「都会……。どんな場所……だろうね」

「わたしは、流行の最先端を行くキャピッキャピな部分と、

仕事の塊みたいなチッカチカした部分、

堅苦しいほどの高級感がごりごりに漂う部分が集まった場所なんじゃないかと思うんだよね。

すべての部分に共通するのは、常に人がいるってこと」

「なるほど……」

俺はね、と高本くんは挟んだ。

「大人びた場所っていうイメージがある。カチカチの背広に身を包んだ落ち着いた人々が、高級感を振り撒きながらカツカツ音を立てながら歩いてるの」

「ほほう……」

「まあ、自分が行くべき場所じゃないなというのは確かな気がする。……美澄さん、都会に興味あるの?」

ううん、とわたしは首を振った。

「別にそういうわけじゃないけど。ふと思ったの、どんな場所なのかなあって。とりあえず間違いないのは、この辺りの何十倍もの数の建造物がそびえ立ってるってことだろうね」

「ああ、それはそうだろうね」

高本くんはふうと息を吐いた。

「あんな場所で難なく暮らせたらかっこいいけど、俺はこの辺みたいななにもないような場所が好きだな」

「ああ……そうなんだ。わたしはちょっと、遊びに行ってみたいとは思う」

言ったあと、わたしは「あれ」と漏らした。

「わたしこれ、都会に興味ある?」

「ある……かな?」

高本くんは困ったように笑った。

わたしが「そうか」と返すと、彼は笑いながら鉛筆を握り直した。