その瞳に写る頃


「そういえばさ」

わたしは自分の歩みに合わせて流れる地面を眺めながら言った。

「昨日、世界征服って実際にやった人いるのかなって言ったじゃん」

「ああ、うん」

光沢のある黒いシャツにブランドものなのであろうジーンズ、それらに負けない洒落たショルダーバッグを肩に掛けた高本くんは、隣を歩きながら短く返した。

「それで昨日、携帯探しゲームやってから自然と時間は過ぎ去りやがったじゃん」

彼は少し笑いながら「うん」と返してきた。

「で、その世界征服の話をしたことを昨日帰ってから思い出したのよ。それで調べてみたのね、誰か世界征服やった人がいるのか」

「おお」

「したら、いなかった」

「へええ、意外だね。一人もいないの?」

「ざっと記事読んでみた感じ、そんな雰囲気だったよ」

「ふうん……」

「そこで思ったんだけどさ。未だかつて誰もやったことのないその世界征服とやらを――」

「絶対やらない」

高本くんはわたしの言葉を遮った。

わたしが「まじで?」と小さく返すと、彼は「当然でしょう」と笑った。

「まあそうだよね」とわたしもつられる。