「えっ、なにあいつ?」
ショウゾウが言った。
「さあ。気まぐれな優しさって感じ?」
わたしは机の上の袋へ手を伸ばし、中を覗いた。
透明な容器が二つ入っている。
大きさは小さなグラス程度で、側面には小袋に入ったプラスチック製のスプーンが付いている。
わたしは二つのそれを机の上に出した。
内容物は、上から順に、透明な青、透明な紫、透明な黄色と色が別れている。
「綺麗だね」
わたしの言葉に、ショウゾウは「とっても」と頷いた。
「食べようか」
「ちょっと待って」
ショウゾウはこちらへ手のひらを向けた。
「なにが入ってるかわからなくない?」
「えっ?」
「これ、タケモリが買ってきたんだよ?」
「えっ、なにショウゾウ、タケモリに毒を盛らせるほどのことでもしたの?」
「ああ……するわ」
言いながら、ショウゾウは人差し指で前髪を払った。
「なにが」
わたしは容器からスプーンを取り、蓋を開けた。
「事件のにおいが、ぷんぷんと」
「わたしにはしない。探偵さんごっこなら、食べたあとに死んだふりでもして付き合ってあげるから。食べないならショウゾウの分ももらっておくよ?」
わたしがもう一つの容器へ手を伸ばすと、ショウゾウは「窃盗、だめ絶対」と叫んで容器を自身の体の後ろへ隠した。



