互いを警戒し合う静止の中、厄介な相手だとわたしは思った。

ショウゾウの言動をかさかさのスポンジのごとく吸収している彼は、もはや少年の容姿をしたショウゾウである。

ショウゾウの世界観や言動には一度も勝てたことがなかった。

こちらから仕掛けた戦いも、毎度気づかぬ間に彼女の色に染まっていた。

知らない人物が出てきたり、こちらは完全に撃たれたと思ったがそうではない設定だったり、他にも例を挙げれば切りがない。


最初に動いたのはショウゾウだった。

しかし彼女の放った水はヤマムラソウタの後ろの地面を濡らした。

「くそが」とショウゾウの呟きが聞こえた気がした。

わたしは自らに冷静になれと言って聞かせたあと、露骨にヤマムラソウタを狙った。

彼がわたしに向けて水鉄砲を構えたのを確認し、掛かった、とわたしは腹の中で口角を上げる。

相手は魔王 百瀬翔子の言動を吸収しているとはいえ、所詮はただの小学校二年生である。

わたしがわかりやすく狙えば、彼はわたしの行動に意を注ぐはずだと考えた。

ヤマムラソウタは完全にこの作戦にはまっている、このまま相手の勘を働かせないままゆっくりともに百八十度動く――。

わたしは脳内で作戦を復唱しながら動いた。

わたしはほっと息をつきたくなった。

ヤマムラソウタはわたしと、わたしは彼とショウゾウと向き合う形になった。

あとはすべてショウゾウの勘のよさに託されている。

わたしは作戦実行から一度もしなかったまばたきをした。

直後、わたしの理想通りの勘を働かせたショウゾウがヤマムラソウタを背後から撃った。

彼がショウゾウの方へ振り返った直後、「完璧だ」と言いながらわたしも引き金を引いた。