給水を終え、振り返った直後に胸元を撃たれた。
「お主は……百瀬アイネ」
へっ、と生意気な笑みを浮かべる彼女へ、バケツ内の水をすべて浴びせた。
「てめえ、よくもアイネに水を掛けたな」
覚悟しろ、と言うと、百瀬アイネはわたしの左手からバケツを奪い、すぐにそれへ給水を始めた。
わたしは周囲を警戒しつつ、彼女をほんの数歩離れた場所から狙った。
満足げな笑顔とともに振り返った彼女の足を容赦なく二度撃つ。
それに反応している間に、今度は腹部に一発食らわせた。
百瀬アイネがバケツを構えた直後、わたしは全力で別の場所へ逃げた。
しかし五十メートル走十秒超えが絶対である走力では幼い彼女からも逃げられる気がせず、ベンチの裏に隠れた。
しかし彼女から仕返しを食らうのは運命だったらしく、わたしが隠れたのを見ていたのか、ベンチの向こう側から水が降ってきた。
「お主……本当に容赦ないわね」
「年齢も性格も頭のよさも関係ないと翔子姉ちゃんは言ってた。アイネは翔子姉ちゃんの言う通りにやってるだけ」
「そうね……」
わたしは右手に持っている水鉄砲を体の後ろをまわし、左腕と脇腹の間から水の出口を僅かに出した。
右手人差し指で思い切り引き金を握る。
出口から勢いよく飛び出した水は、すでに濡れている百瀬アイネの右肩辺りをさらに濡らした。



