何度か氷の入った二つのグラスに繰り返し入れられた後、紅茶が出てきた。

四十代くらいに見える男性へ会釈する。


「高本くんはさ、あの……妄想画だっけ? ああいうのは描かないの?」

「空想画ね。想像画とか。そういうのは……」

高本くんは右方へ目をやった。

それを追うと、鉛筆で描かれた絵を見つけた。

水の中に、バスケットとそれに入っていたのであろう果物が気泡とともに浮かんでいるというものだ。

浮かんでいる果物には、りんごやいちご、ぶどうがある。

「あれって、そういうのに入るのかな」

高本くんは小さく笑いながら言うと、カフェオレをすすった。

彼の動きを真似るようにマスカットティーを含む。

「すっごいおいしい」

感想は簡単に言葉になった。

なにかをしている高本くんの父親は、作業を続けたまま微かに表情をやわらげた。


「あれを描いた頃は」

高本くんの声が聞こえ、右方の絵へ目をやる。

「どうにか自分を――て、なんか恥ずかしいんだけど」

「いやいや、そう言わずに。なんかこう、お洒落なお店でお洒落な飲み物飲みながら深い話するのってさ、若者の永遠の夢でしょう? 特に高校生っていうのは大人びたことをしたがるものなんだって」

わたしの言葉に苦笑し、彼は再度カフェオレに手を付けた。