その後高本くんとぽつぽつ話していると、静かにカフェオレが差し出された。
高本くんの父親の隣で、四十代くらいに見える男性が高い位置から紅茶を注いでいる。
湯気に乗った香りが嗅覚を刺激する。
「本当にああやるんだ」
わたしは心の声を口にした。
「都会の方の店舗では軽く名物風な扱いらしいよ。この辺りは、取材も来ないしインターネットなんかに強い人はこの店に入らないしでちょっとひっそりしてるけど」
高本くんの囁くような声に、わたしは「ふうん」と頷いた。
「この辺の店舗と店の雰囲気も違うの?」
「ターゲットとする年齢層が違うらしいからね。
この辺ではさっきの人くらいの方々、
都会の中でも楽しそうな方では若い人、
都会の中でも落ち着いた方では大人な方々をといった感じかなと、見たり聞いたりしてて思った」
「いや、あのさ――」
質問を続けるつもりだったが、別の機会に尋ねようと思い言葉を止めた。
「ん?」という高本くんの声へ、「またあとで」と返す。



