実際に重たかった扉の向こう側は、まるで別世界のようだった。
テレビで見た店舗よりも壁や天井に飾られているものが多い印象だが、それら一つ一つが高級感を演出している。
一番奥のカウンター席に、よさげな衣服に身を包んだ一人の男性が座っていた。
おじ様、といった呼び方が正しいような男性である。
カウンターの中には、母が好きな俳優に似た渋い男性がいた。
年齢は五十代前半といったところだろうか。
彼は「いらっしゃいませ」と高本くんに似た声を発した。
どきりと心臓が跳ねたあと、まじもんの親子じゃねえかと脳が暴れる。
高本くんの父親は、わたしたちを見つけると小さく口を開けた。
「秀じゃないか」
「おつかれ。友達の夢を叶えにきた」
高本くんの言葉に、彼の父は大きく一度頷いた。
「ああ、あなた様が美澄さんですか。息子がお世話になってます」
「えっ、いや……とんでもないです、こちらこそお世話になっております」
いつもいつも、と自分にもはっきり聞こえないような声で続けた。
高本くんの父親は優しく微笑むと、「お好きな席へお座りください」と優しい声を発した。