彼はゆっくりと上体を起こした。
「えっと……。なんかごめんね、変な話しちゃって」
「いや、全然。むしろ、ちょっと嬉しかった。高本くんのこと知れて」
「そう?」
照れたように笑う高本くんへ、わたしは静かに頷いた。
「……あのさ」
高本くんは控えめに言った。
わたしは笑顔で頷く。
「もちろん。わたしは高本くんがどんな世界を見ていようと気にしない。知らなかっただけで……今までずっと一緒に――」
いや、と高本くんはわたしの言葉を遮った。
「そうじゃなくて。あの……描くの、再開していい?」
「え?」
高本くんは心底楽しそうに声を上げて笑った。
「なんでもない。嬉しい反面、なんかちょっと恥ずかしくなっちゃって」
「で、その恥ずかしさを全力でわたしに丸投げしたと?」
「いやあ……申し訳ない」
高本くんは微かに顔を赤らめた。
「でも……ありがとう」
これからもよろしく、と続けた彼の声は、いつにもまして素敵なものだった。
女子らしい鼓動を隠そうと、彼に体をぶつける。
「いつも以上にいい声出すんじゃないよ。女優にでもなったのかと思ったじゃん」