その瞳に写る頃


「で、まあそんな感じで、先に先生にそういうこと聞かされるんだよ。

そこで俺、ほら当時おかしかったから、『いや、賞いらないです』みたいなこと言っちゃって。

前に一人だけ敵わない人がいるみたいなこと言ったでしょう? それで、『彼の絵の方がいいじゃないですか』みたいな」

「かっこいいじゃん」と言うと、「いや、そんなイケイケヒューマン的な感じじゃなくて」と苦笑が返ってきた。

「ほら、当時の俺としては、自分が周りと違うっていうことだけが頭にあったから」

「ああ……。えっ、えっと……それは……?」

尋ねていいものかと思いつつ言葉を並べると、高本くんは「ちょっと待って、距離作らないで」と笑った。

「えっ、それって?」

「その……周りと違う……? ということには、どうやって……?」

「ああ、だからほら、絵を描かされるときに、見た通り、記憶した通りに描くんだよ。鉛筆だけで。

で、それを提出すると、『ああ……こうじやなくて、鉛筆以外のもので色塗って』みたいなこと言われて、『ええ……?』みたいな。でも周りをよく見てみると、確かに皆自分とは違うもの使ってて。

で、そこでようやく検査受けて、ああ……みたいな」

「なるほど」