その瞳に写る頃


わたしは自分の足元を眺めた。

どこを見ていればいいのかわからなかった。

過去のすべての言動に対し、強い後悔が胸中を渦巻く。


「その……さ」

出した声は微かなもので、少し震えていた。

「色……」

「いやちょっと待ってよ」

言ったあと、高本くんは楽しそうに笑った。

「もー。こういう感じになるから言いたくなかったんだよなあ。絶対、なんかこう……なにかが変わるでしょう?」

「いや、だって……」

「別に俺はこれで死ぬこともないし、普通に生活するだけなら不自由も感じてない」

目をやった先の高本くんは、浅く唇を噛んでいた。

彼はそのまま頼りない笑みを浮かべる。

「ただ、これからはどうするかなって感じ。周りとの違いに気づくまではなつしろで働こうと思ってたんだけど、今は、あそこ飲食店だし、みたいな」

わたしは手元のノートへ視線を落とした。

彼の描いたすべての絵が脳をかけめぐる。

あれらこそが、彼の見ている世界なのだとわかった。

体が震えた。

俺は見えているものをそのまま描いているだけだ――。

いつかの高本くんの言葉が鮮明に蘇る。

謝罪の言葉を発した声は、自分にさえ聞こえないほど微かなものだった。