渡されたノートに描かれた景色は非常に美しいものだった。
芝生に咲くたんぽぽとそれが落とす影、クローバーの中に咲くシロツメクサ。
水滴を輝かせるあじさいと、その手前のベンチにいるかたつむり。
高本家の庭にあるものだと思しきひまわりに、いくつかの雲が浮かぶ空、そのもとで輝く作物。
高い空を両端から彩る紅葉、地面に落ちたイチョウの葉と銀杏の実。
ベンチに座る足元を飾る落ち葉、少し暗い空を飛ぶ凧――。
翌日、わたしは丈の短い薄紅色のティーシャツにデニムのショートパンツという出で立ちで高本家の縁側に座っていた。
ノートは、書籍を眺める姿を描きたいと言う高本くんが持ってきたものだ。
小学生時代に絵を描くのに使っていたものだという。
書籍となると少しばかり大きくないかと言ったが、大きさはこちらで調節するとのことだった。



