その瞳に写る頃


「じゃあ、わたしは小説家希望で行こうかな。高本くんは――」

「えっ、俺も?」

高本くんが戸惑うように言った直後、わたしは「もちろん」と返した。

「高本くんは、広く人間関係を築くことは望まない、芯は強い、完璧主義者ってところ?」

「いや……ものすごくかっこよく言うと、そうならなくもないのかもしれないってところ」

「となると……。クリエイティブな職業が向いてると思う」

「……例えば?」

「ウェブデザイナー、とか?」

高本くんは首を振りながら自分のノートを指で叩いた。

「言ったでしょう、このノートに書いてあることさえまともに理解できないような頭脳の持ち主だと。

ウェブデザイナーとか、よくわからないけど相当な頭脳の持ち主こそがこなせる仕事でしょう?」

「じゃあもう、素直に画家。自分の絵に自信がないとかなんとか言ってないで、画家。高本くん、実際ものすごい画力の持ち主なんだから」

「画家か……」

高本くんが呟いたあと、わたしは「あっ」と声を上げた。

「いいこと思いついた。それか、アニメの制作側に行くとか。なんかもう、ものすごい仕事じゃない?」

「いや、そうなってくるともう、なにもかも足りない」

わたしたちは少しの沈黙のあと、同時に小さく笑った。

「将来を決めるのって、大変だね」