その瞳に写る頃


高本くんの絵を携帯に残したあとは、聞こえてくる蝉の声やししおどしの音、風鈴の音に焦燥感を抱いた。

隣でノートのページをめくる音が聞こえた。

「いやあ、どうする?」

高本くんは言った。

わたしはため息をつく。

「どうしようねえ……」

わたしはさらにため息をついた。

自分のノートを指で叩く。

「ここに書いてある内容、いまいち理解できてない頭の持ち主だよ」

「俺も」と高本くんは笑う。

「この頭脳を抱えて仕事探せとか。もう本当に、鬼畜の行為でしょう。わたしらのような人間を人間だと思ってないね、確実に」

わたしはため息をつきながらテーブルにもたれた。

「こうして仲のいい人なんかと勉強ノート眺めたら、自分にもそっち分野の可能性が見いだせるんじゃないかと思ったんだけどさ。

まあ一ミリも見いだせないよね。むしろなんか、可能性がないことを再確認したというか……」

「だから言ったでしょう。自らの学習能力が低いことを再確認する前に真剣に就職のこと考えた方がいいって」

わたしがさらにため息をつくと、慰めと受け取るべきか急かしと受け取るべきか、ししおどしが音を響かせ、風鈴までもが優しい音を鳴らした。