その瞳に写る頃


「夏の好きなところと嫌いなところってある? わたしはね、お祭りとか花火があるのが好きなところで、嫌いなところは肌とか服が汗でべっちゃべちゃになるところ」

高本くんは考え込むように小さく唸った。

「夏に限ったことではないけど、空気が好き。嫌いなのは……暑いところかな。あと、夕刻にこの辺りで絵描いてるとあちこち蚊に刺されてるってところも」

「あっ、高本くん蚊に刺されやすい人?」

「いやあ、そんなことはないと思うけど。誰だって外でほとんど動かずにいたら刺されるでしょう」

「ああ、確かに。どっちがモデルだかわからないもんね、わたしたち。ていうかよくこんな動くものを描けるよね」

「いやそんな。カメラじゃあるまいし。多少動いたって描けるよ」

「わたしは描こうとしてるものがどれだけ動いていようと止まっていようとまったく描けないけど」

神様って本当にいたずら好きだよねと苦笑すると、高本くんも笑った。