その瞳に写る頃


制服からブレザーがなくなってから夏休みに入るまでは、随分短く感じられた。

世間的にも好評だったらしい菓子の「かろやか」シリーズから、「かろやかれもん」、「かろやかすいか」、「かろやかぶるーはわい」を差し入れに、黄色のノースリーブのワンピースで高本家を訪れた。

わたしは縁側にうつ伏せで寝、かろやかぶるーはわいをつまんでいる。

高本くんは少し離れた位置からわたしを描いている。


蝉の声に風鈴の柔らかな音が重なった。

「いやあ、夏だねえ」

わたしは「かろやかぶるーはわい」を咀嚼しながら言った。

「そうだねえ」と穏やかな声が返ってくる。

「夏といえば怖い話じゃん? 高本くんって怖い話好き?」

「好きではないかな。怖いし」

わたしはふふっと笑った。

「なんか意外。わたしのイメージでは、ふうん……ていう感じで聞いてそう」

「そんな冷静に聞いていられたら楽だろうね。聞いたあとしばらく引きずるというほどではないけど、聞いてる間は怖いよね」

「ほおん……」

「美澄さんは怖い話得意?」という高本くんの問いに、「わたしは結構好きだよ」と答えた。

「その話に出てくる幽霊の気持ちとか勝手に想像するのが好きなの」

高本くんが苦笑するのが聞こえた。